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カタメルワールド

こんばんは七月です。

今回はアクセルワールドの石化SSを書きました。
黒雪姫は最近だとトップクラスに固めたいキャラでしたが、原作の設定の複雑さがネックになってなかなか書けませんでした。
今回は思い切って書いてしまったわけですが、やっぱり苦労してしまいましたねw
結局設定とかもわかりやすいように改変してたり、そもそも説明不足になっちゃったかもしれません……
あとレイカー師匠の日常用アバターの造形がよくわからなかったので、そこは適当になってますのでご容赦のほどを(汗)
ただ、楽しんで黒雪を固められたので、個人的には満足なSSになったとは思います。
原作を知っていると荒が目立つし、知らないと設定がわかりづらいどっちつかずなSSだとは思われますが、よろしければ続きよりどうぞ。


黒雪姫は多分すぐわかると思いますが、猫っぽいのがチユリ、宇宙を背景にしてるのが楓子です。


ちなみにこのEDが大好き。




ガチャリ、と音を立てて風呂場の扉があいた。
「ふう……」
身体から湯気を立ち上らせ、満足げな様子で出てきたのは黒雪姫だった。
桃色の可愛らしいパジャマを着た黒雪姫は、ほんのり湿った艶やかな髪を白いタオルで拭きながら椅子に座る。そして、ドライヤーで髪を乾かしながら、壁に掛かった時計に目をやった。
「そろそろ時間か」
時計の針はあと5分ほどで15時を指す頃だった。
黒雪は急ぎ髪を乾かすと、ドライヤーの電源を切る。そして、時計の針が丁度15時を指そうとする瞬間を見計らい、黒雪はゆっくりと目を閉じた。
「バーストリンク」
小さな可憐な唇で黒雪はそうつぶやく。
瞬間、世界が加速した。



『ブレインバースト』と呼ばれるゲームがあった。
東京を中心に少年少女の間に広まっているこのゲームは、いわゆるネット用アバターを使ったバトルゲームだ。
ネットが電脳世界と言えるまで進化し、誰もが自分自身の身体にニューロリンカーと呼ばれる専用の端末を持つ時代。このニューロリンカーによっていついかなる状況でも簡単にネット世界へとダイブできるこの時代において、このゲームはさらに革新的な力を所有者に与える機能を持っていた。
『加速』
思考をおよそ1000倍に加速し、ブレインバーストの舞台でもあるもう一つの世界「加速世界」へと足を踏み入れるための能力だ。
基本的にはネット世界と同じシステムで構成されてはいるが、現実とはおよそ1000倍の時間的差異があるこの世界で戦うものをバーストリンカーと呼んだ。
黒雪もそのバーストリンカーの一人であり、今まさにその世界へと足を踏み入れた瞬間だった。
加速空間に降り立った黒雪は、その姿をネット用のアバターへと変質させていた。
現実世界での美しい容姿はそのままに、肩を広く露出した黒いドレスに、背中には大きな揚羽蝶の羽が装飾として付けられている。
この黒揚羽蝶の姿が、ネットや加速世界での黒雪の姿だった。
「ふむ、早すぎず遅すぎず……丁度いい時間だな」
加速した黒雪姫は時刻が丁度15時を指したことを確認する。
そして、そのまま自身のアバターをグローバルネットに接続し、とあるアドレスを打ち込み、アクセスを開始した。
身体が光に包まれ、泡沫のように消えると同時にその身体は全く別の所へと転送される。
そして、その目的の場所で黒雪の体は再構成された。
黒雪姫が降り立ったのはとあるエリアの転送用ゲートだった。
転送用のゲートからは綺麗に整った石畳の道が続いており、その先には大きな庭園と屋敷が見える。
エリア名は『楽園』。
確かにこの緑に囲まれた静かな庭園のエリアは、午後の優雅なティータイムを過ごすような場所としては『楽園』なのかもしれなかった。
黒雪姫がエリアを見渡していると、不意に新たな転送者がゲートに現れた。
一人は白いワンピースをまとい、頭に猫耳を生やした少女。もう一人は令嬢が着るような薄い水色のカーディガンを羽織り、長めのスカートをはいた長髪の少女だ。
「やあフーコ、それにチユリくん」
「先輩、こんにちは」
「サッちゃん、お待たせ」
現れた二人は後輩であるチユリと、古くからの親友である楓子だった。
3人がこのエリアを訪れたのはとあるメールを受け取ったからだ。
そのメールの内容は女性バーストリンカー同士のお茶会への招待状だった。
今回は戦闘用のアバターではなく、普段のグローバルネットで使用しているアバターでの参加ということだ。
つまりはバーストリンカーとしての正体を隠して、普段の日常を過ごしている姿での交流会といった感じだ。いわゆる女子会といったものだろうか。
普段はポイントを巡って争っている仲だが、こういった交流も悪くはない。
黒雪たちはせっかくの機会だということで参加を決意したのだった。
実際にこうして来てみると思いのほか参加者は多いようだ。
すでに道の先にも何人かの影が見えるし、黒雪たちの後からも次々と新たな客人が転送して来ていた。
「やはりこうして見ると新鮮だな」
どれも日常用のアバターのため、普段ブレインバーストで見かけるような厳つい造形のアバターは見られず、どれも戦いとは無縁そうな可憐な少女の姿をしていた。
自分たちが普段このような少女たちと争っているとはなかなかに面白い。
例えばあの可愛らしいアバターが、戦場では幾多の敵を葬り去るような強靭なバーストリンカーなのかもしれない。
「ふふ、こういう考え方は邪推だな」
今回の企画の趣旨はあくまで戦いを抜きにした交流だ。
企画者の趣旨に感謝して、存分にこのお茶会を楽しませてもらおう。
黒雪たちは屋敷に向かって、このエリアの景色を楽しみながら歩き出した。



それから1時間後のこと。
『御出で下さった方からご自由にご歓談ください』という看板の通りにお茶会は自然と始まり、そしてつつがなく進行していた。
西洋風の庭園にはいくつもの白いテーブルとイスが置かれており、テーブルの上には紅茶とケーキが載せられている。
黒雪もそれを頂きながら名も知らぬ少女たちと歓談し、話に花を咲かせてはこのひとときを楽しんでいた。
しかし、やはり気にかかる点はある。
「未だに主催者が顔を見せないな」
「そうね……」
楓子も気になっている様子であたりにこっそり目をやっている。
おそらくはこの目の前にある大きな屋敷の主人なのだろうとは思うが、これだけ時間がたっても一向に姿を見せる気配はない。
すでに一通りの来客はそろったようで、開催時間に遅れて転送用ゲートをくぐってくるものもいなくなっていた。
「こういう場を提供してくれたのはありがたいが、主催者が姿を見せないというのは些か無礼だと思うのだが」
黒雪はやや不満げな表情を浮かべ、手に持ったお皿からティーカップを持ち上げると静かに口をつけた。その時だ
「みなさま、ようこそおいで下さいました」
不意に屋敷のほうから声がした。
見れば、庭園から屋敷へと続く階段の上に、一人の少女が立っている。
長い金色の髪に碧眼の瞳。透き通るような白い肌に紅の唇が映えている。西洋のお嬢様をそのまま表したかのようなアバターに来客たちや不満を口にしていた黒雪すら目を奪われた。
「どうかこの安らぎのひとときを、存分にお楽しみくださいね」
そうにっこりを笑うと、少女のアバターはゆっくりと階段を下る。
「すごい美人ですね」
「本当に……」
チユリと楓子も思わず声を上げた。
少女のアバターは優雅に歩を進めると、やがて庭園に降り立った。それと同時に黄色い歓声をあげながら、複数のアバターが彼女の周りに集結する。
それに対し微笑み返すと、
「皆様をお招きしたのは他でもありません」
そして、高く澄んだ美しい声で、少女は言い放った。
「皆様に、私のコレクションになっていただくためです」
瞬間、彼女の瞳に明確な、どす黒い何かが浮かんだことを黒雪は見逃さなかった。
突然、少女のアバターが光に包まれた。そして、その造形を見る見るうちに変えていく。
優雅な女性の姿が消え、姿を現したのは1体の女性のアバターだ。
青白い肌には無数の蛇の装飾が施されており、胸元には大きな目のような紋様が描かれていた。
「我の名は『ゴルゴン・グリース』」
灰色を意味する名を持つこのアバターは、蟷螂のような鋭く赤い瞳で来客たちを見渡している。
「あれは……戦闘用アバター……!?」
なぜこの場で!?という疑問は愚問というほかなかった。この場に戦闘用の姿で現れた理由なんて一つしかない。そして、その答えはすぐに行動となって表れていた。
「きゃあっ!」
「ぅ……わあっ!?」
ゴルゴンの身体から伸びた蛇を模したワイヤーの先が、近くにいた2体のアバターの首にかみついていた。
そのまま2体のアバターは宙づりにされ、他の来客の前にさらし者にされる状態となる。
「な……何っ!?」
チユリが思わず声を上げる。
ゴルゴンの周りにいたほかのアバターも現状を全く理解できないといった様子で、ただただ目の前の出来事を呆然と見つめていた。
「あ……あ……」
「何……これ……」
噛まれた首から、アバターの身体がじわじわと灰色へと染まっていった。やがてそれは全身におよび、2体のアバターは動きを止めた。
全身灰色に染まり、微塵も動かないその様子はまるで石像だ。
「貴様らには全員、ここで石像になってもらおう」
ごとり、と2体の石像を無造作に地面に落としながらゴルゴンが言い放った。
そして、悲鳴が木霊する。
少女が石に変わっていく光景を目の当たりにし、一斉に招かれた少女たちはこの庭園から脱出せんと逃げ出し始めた。
そんな逃げ惑う少女たちにも容赦なくゴルゴンの放つワイヤーが突き刺さり、その体を石へと変えていく。
「先輩! あいつ……」
許せない、といった表情を浮かべながら、チユリはゴルゴンを睨む。
「気持ちは分かるがチユリくん。戦闘用アバターでない我々では分が悪いぞ」
どうやらゴルゴン以外の戦闘用アバターは、このエリアを構成するプログラムによって封じられているらしい。
先ほどからイメージを繰り返すが、黒雪もブラックロータスの姿にはなれなかった
「流石の私も学内アバターに武器はつけてないし……」
楓子も、若干困り果てた様子で頬に手を当てている。
「じゃあどうすれば……」
チユリは縋るような目で黒雪を見つめる。
その視線を受け、黒雪はふぅ、と小さなため息をついた。
「仕方あるまい」
そういって黒雪は傘を畳み、目の前に掲げる。
「私が、何とかするとしよう」
そして、傘に仕込んでいた仕込み刀を抜き去った。
「黒雪先輩……いつもそんなもの持ち歩いてたんですか」
「うむ。備えあれば憂いなし、だ。」
ふふん、と自慢げな黒雪に対しチユリは呆れ顔だ。
「さあ、私が相手をしてやろう」
黒雪は刃の切っ先をゴルゴンへと向け言い放った。
「ほう、我に逆らうか」
ゴルゴンは一旦逃げ惑う少女たちを襲うのをやめ、黒雪へと向き直る。
「なら、次は貴様を石にしてやる」
「やれる……ものならなっ!」
2体のアバターが同時に動きだし、そして激突した。




「すごい……」
チユリは目の前で改めて黒雪の強さを見せつけられていた。
突如として始まったゴルゴンと黒雪との戦闘。それはすがすがしいくらいに一方的なものだった。
加速世界において黒の王と恐れられている黒雪。
その黒雪の放つ流麗で、それでいて激しく繰り出される剣舞。それは貧弱な仕込刀1本になったところで輝きを失ってはいない。
黒雪はゴルゴンの繰り出す蛇の鞭をいともたやすく切り伏せ、即座に間合いを詰めてはその敵の体に刃を走らせていく。
「くっ……」
「どうした。先ほどの貴様の威勢はどこへ行った!」
ゴルゴンはもはや防戦一方だ。
刃をかわし、いなし、次第に後ろへ後ろへと追い詰められていく。そして
「はっ!」
キィン、と音を立てて黒雪の刃がゴルゴンの左腕を切り飛ばした。
「ぐ……っ!」
苦悶の声を上げ、よろけるゴルゴンに黒雪は容赦なくとどめを刺そうと刃を振りかざす。
「終わりだな」
そして、それを迷いなくゴルゴンの首を切り落とさんと振り下ろした。
「そうだな……」
だが、それに臆する様子もなく、いたって平静にゴルゴンは言葉を返した。
「お前がな」
なぜなら、この瞬間すでにゴルゴンは己の勝ちを確信していたからだ。ゴルゴンは自らの必殺技ゲージがたまっているのを確認すると、その“技”を放った。

「石の祝福≪ゴルゴンブレス≫」

突然ゴルゴンの胸元に描かれた目の紋様が怪し光りだした。
「な……っ!」
突然の反撃に、黒雪は目を見開いた。だが、もはやどうすることもできず、黒雪は光に飲み込まれていった。そして……




カラン、と音を立てて黒雪の握っていた刃が地に落ちた。
「サッちゃん……」
「そんな……」
光がやんだ後、呆然と見つめる楓子とチユリの前で黒雪姫は石像になっていた。
普段の凛とした表情とは対照的に、黒雪の顔には突然の出来事に対する驚愕の表情が現れている。
刃を振り下ろそうとした伸ばされた腕もそのままに、黒雪はその動きを止めていた。
石の祝福≪ゴルゴンブレス≫――――ゴルゴン・グリースの必殺技であるこの技は、ゴルゴンの胸元の目を見たものを一瞬で石に変えてしまうというものだ。
如何にレベルが高かろうとも、いかに防御力があろうとも関係ない。
この瞳を見てしまったものは須く、その身をただの石像へと変質させる。
黒雪もこの瞳を見たために、ただの石像へと変わり果ててしまっていたのだった。
「黒雪先輩が……石に……」
この誰もが予想をしえなかった結末に、辺りはしんと静まり返っていた。
楓子ですらまさか黒雪が負けるとは思わなかったのだろう。両手を口に当て、目を見開いた様子で黒雪の石像をただただ見つめていた。
あのゴルゴンを圧倒していた少女が、あまりにもあっけなくただの石像と化してしまった。その事実は、今ここにいる誰があの蛇女のアバターに挑んだところで、決して勝つことはできないということを証明していた。
「いやああああっ!」
やがて、我に返った誰かの悲鳴が上がった。そして、それを合図に来客たちはまるで雪崩のように我先にと脱出地点である転送用ゲートへと逃げ出していった。
「逃がすものか」
当然ゴルゴンにはそれを見逃すつもりはない。
黒雪に切り飛ばされた腕を再構成させたゴルゴンはパチン、と指を鳴らすとその名を口にする。
「来い、バジリスク」
地響きを鳴らし、大量の砂煙をあげながらそれは現れた。
脱出地点から現れたのは巨大な蛇のエネミーだ。それはちょうど脱出ゲートを囲むようにとぐろを巻き、何人たりとも逃走を許さない。
「そんな……あれじゃあ脱出できない……」
脱出ゲートを塞がれて、右往左往するアバター達。
そんなアバター達に向かって、蛇のエネミーは口を大きく開くと灰色のガスを吐き出した。
そのガスは、出口を求めてゲートへ集まっていたアバター達を瞬く間に呑み込んでいく。そして、その姿を黒雪姫同様に灰色の石像へと変えていった。
呆然と立ち尽くす様子で、命からがらに逃げ出す様子で、絶望に泣きわめく様子で……様々な格好で少女たちのアバターは固まっており、瞬く間にゲートの周りには石像が立ち並ぶ光景が出来上がっていた。
「みんなまで石に……」
「……」
チユリと楓子はその様子を沈痛な面持ちで見つめていた。
逃げようとすればあの巨大なエネミーには阻まれ、そして逃げなければこのゴルゴンを相手取らなければならない。
万事休すだ。
「残りはお前たちだけか」
やがて黒雪を石にしたゴルゴンは、動かなくなった黒雪の横を難なく通過すると、残されたチユリと楓子の前へと立ちはだかった。
「お前たちはここで全員が石になり、私が責任を持って回収してやる」
そして、その視線を二人とむけると同時にゴルゴンの周りに無数の光の玉が浮かんだ。それはすぐに鋭くとがった矢の計上へと変化し、その先端を標的へとむけた。
「くらえ……解呪の矢≪フェイルナート≫」
勢いよく発射された無数の光の矢が、楓子とチユリを襲った。
「こんな技まで……」
「きゃあっ!」
楓子とチユリはそれを何とか回避した。しかし、
「さっちゃん!」
石像となり、動くことのできない黒雪にその矢が突き刺さる。
「いやあっ!」
石像が砕けるビジョンを思い描き、チユリが思わず顔を覆った。
だが、幸いそのようなことは起きなかった。矢によって砕けたのは衣装だけだ。
解呪の矢≪フェイルナート≫――――無駄なしの弓とも呼ばれるこの技は、その身に着けた不純物を一掃する。
服や装飾。そういったものを選択的に破壊するこの矢によって衣装を砕かれた黒雪姫の石像は、体の一部である美しい羽根はそのままに、慎ましやかな裸体をさらしていた。
普段の黒雪ならば慌てふためく状況だっただろうが、今やただの石像になってしまった黒雪は自らの裸体を余すことなく露わにしたところで微塵も動揺する気配はない。
ただ、立ち尽くすだけだ。
「今度は外さん」
再びゴルゴンが矢を出現させる。そして、それらを一気に楓子に向かって発射した。
楓子は再び回避の体制をとる。だが足元に気を配るのが遅れ、楓子のかかとは小さな段差にぶつかってしまった。
「しまっ……」
段差に足を取られた楓子が体勢を崩した瞬間、楓子の胸を光の矢が貫いた。
「きゃああっ!?」
槍は楓子の衣装をすべて消し飛ばし、その姿を一糸まとわぬ裸へと変えてしまった。
露わになったその優美な美しい肌に見とれることもなく、ゴルゴンは尻餅をついた楓子に向かって肉薄した。
「石の祝福≪ゴルゴンブレス≫っ!」
裸にされ、動揺していた隙を突かれた楓子は、光るゴルゴンの瞳をしっかりとその目で見てしまった。そして……
「あ……ああ……」
「先輩……っ!」
呆然とするチユリの前で、楓子の体が足元からずぶずぶと石に変わっていった。
足から太もも、腰、胸、両手に首、そして最後にその顔も灰色に染まっていく。
尻餅をつき、自らの裸体を必死で隠そうとする格好で楓子は完全な石像になった。
「黒雪先輩……楓子先輩……二人とも石に……っ」
チユリの視界の中には黒雪と楓子の二人の石像が映っている。
どちらも灰色一色に染まり、決して動くことはなかった。
「あとはお前だけだな」
楓子を固め終えたゴルゴンがゆっくりとチユリのほうを向いた。
黒雪も、楓子も石になってしまった。
二人より弱く、そもそも武器など持っていないチユリには最早為す術などはない。
チユリはただ、石像へと変わりゆく運命を受け入れるほかなかった。
「何か言い残すことはあるか?」
へたり込んだチユリを見下ろしながらゴルゴンは冷たい声を発していた。
「こんなことをして……あんたなんか絶対ひっどいバチが当たるんだからね!」
「ふん、どうだかな」
そんなこと全く信じていない様子でチユリの怒声を聞き流すと、ゴルゴンの瞳は無慈悲にチユリの瞳をとらえた。
「あ……」
「さあ……石となれ」
ゴルゴンが必殺技を発動させると、光がチユリを包み込む。
せめてもの抵抗だろうか。チユリは悲鳴も上げず、ただ静かに光の中に消えて行った。そして……
「……完成だな」
ゴルゴンの前に、チユリの石像が出来上がっていた。
両手を前につくようにへたり込み、真っ直ぐにゴルゴンを見据えながら固まっているチユリ。
歯を食いしばり、瞳に目一杯の涙と湛えたその表情には、ゴルゴンに対する憎しみと、そして自らの無力に対する悔しさが見て取れた。
「さて、これで全員が石になったか」
ゴルゴンはそうつぶやきチユリの石像から視線を外すと、エリア全体を見渡した。
そこには誰一人として動く者はなく、ただ大量の石像が立ち並んでいた。
「ふふ……素晴らしいな」
正に壮観。
これこそゴルゴンが望んでいた結末だ。
「だが、もう一苦労しなければな」
自らが作り上げたものは、自らの手で最高に美しく飾ってあげなければいけない。
ゴルゴンは無数のワイヤーで石像たちを持ち上げると、それらを飾り付けていく作業へと移るのだった。




そこはきれいな庭園のエリアだった。
白い石畳の両脇には少女の石像が立ち並んでいる。
その石畳を進むと少し開けた空間に出る。周りには一面の花壇。入口は花のアーチで象られており、中心には輝く水を噴射する噴水があった。
この場にも無数の石像が飾られており、それは花壇の真ん中だったり、門の両脇だったり……特に噴水の中に飾られた石像はその身に水滴を滴らせ、光り輝く美しさをまとっていた。
さらにこの庭園を抜けると大きな屋敷がある。その一室の窓から一人の少女がその庭園を見下ろしていた。
「うふふ、絶景ですわね……」
眼下に広がる石像の立ち並ぶ庭。その光景をうっとりとした表情で眺める金髪の少女は他でもないゴルゴン・グリースだ。
「美しい少女を美しいままに飾る……」
これぞ至高の喜びだ、と言わんばかりの満足げな表情を浮かべるゴルゴン。
石像とは、人間の放つ一瞬の輝きを永遠に閉じ込める。そんな刹那の芸術だとゴルゴンは常々考えている。
特に本物の少女を石に変えたときの美しさは格別だ。なぜなら、石になるまでは本当にごいていたものが、永遠にその時を止めてしまうのだから。
「特に私に逆らったこの3体は素晴らしいですわ」
ゴルゴンは窓から離れ、室内に向き直る。
その視線の先にあるのはあの日、石にされたままの姿で変わらず佇んでいる黒雪、楓子、そしてチユリの石像だった。
2人に合わせるためだろう、チユリの衣装は砕かれ、3人そろって裸婦像としてゴルゴンの部屋の壁際に台座に載せられた状態で飾られていた。
本来美術品……特にお気に入りであるならばガラスケースにでも入れて丁寧に保存するべきなのだろう。だが、やはり愛しい物には直接手で触れて愛でてあげたい。
ゴルゴンは欲求のままに、黒雪の太ももを手でなぞった。冷たく硬い石の感触はこの世の何よりも心地よく、ゴルゴンの心を満たしていく。
いくら触ったところで何の反応も見せないところも、ああ、あの可憐な娘は今はただの石像なのだ。という事実を再確認できるようで、とても……とても良いものだ。
勿論ここにある石像はアバターの石像であって、現実世界の彼女たち自身が石になっているわけではない。
操作者が強制ログアウトをしてしまえば、そのアバターは魂のない抜け殻と化す。
だが、ネットの普及した現代社会において、このネット空間というものは第二の現実世界を言っても過言ではない。
そして、そのネット空間におけるアバターを言うのは、いわば第二の世界の自分なのだ。その彼女たちの身体はまさに今ここに石として飾られており、彼女たちはネットに接続し、加速するたびにその魂をこの石像に宿すこととなるのだ。
「現実世界では普通の少女でも、この世界に足を踏み入れた瞬間には彼女たちはただの石像という存在……」
そう考えるだけでも、ゴルゴンは胸が高鳴るのを隠すことはできなかった。
「ああ……」
この石像が立ち並ぶこのエリアはまさしく私の理想の空間だ。
ゴルゴンは甘美に酔いしれる。無垢な少女たちの石像だけが延々と立ち並ぶ、石の楽園に……。
「今日は……彼女たちでも眺めながらにしましょう」
ゴルゴンはゆっくりといすに腰掛けると、カップに紅茶を注いだ。そして、目の前の石像を堪能する。
石像を眺めながらお茶を飲む。単純だがこれ以上ない幸せを、ゴルゴンは今日も満喫する。
ゴルゴンはこの彼女だけの世界で、許す限りの時間を幸福に過ごす。そして黒雪たちはその間、石像としてこのエリアを彩り続けるのだった。
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冷やしtwitterはじめました。

プロフィール

七月

Author:七月
七月(ななつき)といいます。
固体少女様にて稚拙な文章を投稿させたりなんかしていただいてます。
時間がありましたら暇つぶしにでも見てやっていただけるとありがたいです。

好きな漫画(ラノベ)、アニメ:魔法少女リリカルなのはシリーズ、ながされて藍蘭島、とある魔術の禁書目録、C3、ソウルイーター

好きなゲーム:東方project、夜明け前より瑠璃色な、BALDRSKY、SO3、SO4、サモンナイト3

最近好きなアニソン(ゲーソン):沈黙の空、jihad(BALDRSKY)、only my railgun(とある科学の超電磁砲)、Refrain(プリンセスうぃっちぃず)
連絡などございましたら以下のメールフォームへ
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ただ、僕は結構メールを放置する癖があるので、もし連絡が遅くなったらごめんなさい。

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